COJ阪神支部

旧「COJ山梨支部」。なお、中の人は巨カスの模様。

VR/SR/PR禁止イベントと"ゼロックス理論"

イベントの話をしよう。しかしその前に、昔話に付き合ってほしい。

 

ゼロックス理論とは

http://mtgwiki.com/wiki/%E3%82%BC%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9

MTGのとあるトッププレイヤー初出。

MTGという土地の必要なゲームで、「土地引く確率を減らす分、引くこと自体の回数を増やすことで土地事故は減らせる」とか言ってドロー効果ついたスペルをぶち込みまくるという(当時としては謎な)構築。

終盤のトップゲーで土地、とか泣きたくなるしねあのゲーム。それを構築段階で回避しようとしたのだ。

 

ざっくり言うと「ドロー付きのカードをいっぱい使って、盤面を維持しつつ圧縮しまくって次のドローの質(つまり手札の質)を上げよう」って話だと思っていい。

アドバンテージ自体は取れていないのがポイントだ。

 

遊戯王の【除去ガジェット】もこの系列のデッキと言える。

"ガジェットでガジェットを引いて、通常ドローで高確率で除去魔法or罠を引く"。

ガジェが盤面に出てきて、デッキの中のモンスターの割合をガジェで少なくして、自分に都合のいいトップ除去ゲーをキメるのだ。

こちらでは、ガジェットを召喚する行為でアドを稼げている。そのガジェットを1:1交換の除去で守るのだから、ガジェット自体も1枚のモンスターとして活躍する。

 

・COJにおけるゼロックス理論

土地に相当するカードこそないが、COJは圧縮ゲーである。

今思えばVer1.0黎明期の「箱3鎧2棚3」の時点で"最序盤に箱を擦ってデッキの中からトリガーをなくせばドローが強くなる"のが定石だった。

最もこの時点では、箱がぶっ壊れていたのもあって当時のプレイヤーの誰もが「箱3鎧2棚3」を採用していたので、構築による差異はほとんどなかった。

その後箱が修正され、追い風・突撃ゲーの時期が続く。デッキの回転については「ハウリングでの盤面放棄ドロー」「追い風+ハウリングでの手札交換」が常になり、"盤面を維持した圧縮"は重視されなくなった。盤面は毘沙門で無理やり取ればいい。

そんな中、一つのデッキが彗星の如く現れ、Ver1.0EX_35へのバージョンアップと同時に瞬く間に環境を支配してしまった。そう、ヒッキー氏の【ジークブック】である。

http://hikariver.blog.fc2.com/blog-date-201310.html

読んでほしいのはカラスマドウのところ。

"デッキを20枚くらい掘った頃にはデッキの中身をユニットと陳列棚だけにするのが理想で、その実現に大きく貢献するのがこのカード。デッキのインターセプトを涸らしてしまえば連続オーバーライドの確率が高まり、デッキの回転率も格段に上がります。"

【ジークブック】を知っている人ならあの意味不明な連続ORは忘れられないだろう。

バクダルマンLv3+ジークフリートLv3という非現実的なコンボ(もちろんそれに固執する必要はない)は、この圧縮テクニックから生まれるのだ。

最も【ジークブック】が不可侵型から挑発型に移行するにつれて、コンボパーツを揃えるためのハウリングの採用は増えていくのだけれど。

 

Ver1.1~Ver1.1EX_1で、COJにおけるゼロックス理論は最盛期を迎える。僕がこの話をするようになったのもこの時期だし、現に僕が割と勝ってた環境。

カパエル他"珍獣サーチャー"、マコ他の"種族サーチャー"が一斉に登場し、「1体出して1枚引けるユニット」が爆発的に増加。さらに各種魔導書や種族トリガーなどの「0CPサーチトリガー」も大量生産され始めた。

ガジェットを彷彿とさせるアドバンテージユニット。MTGが泣き出すレベルの0CPドロースペル。ゼロックス理論でデッキを回転させる上で、完璧なカードプールになったのだ。

そして、ハウリングによる「盤面を放棄してのドロー」が必要なくなったのもこの時期。当時から"毘沙門研究家"だったちょもす氏から引用。

http://chomosh.hatenablog.com/entry/2013/12/13/130313

"1.1の毘沙門にハウリングは入らないよ。だってユニット出しても手札減らないユニット何体いると思う?12体ですよ。手札上限ないならハウリング考えるけど、毎ターン2ドローのゲームで、手札が7枚のゲームで、こんだけCIPドローユニットがいたらハウリングなんか打つ暇ない。で、じゃあハウリングを打てる構築とこのサーチだらけの構築を比較した時には、ハウリングより少ないCPで動けるこっちの構築の方が強いに決まってるさ。"

とにかく、青以外の(!)デッキはハウリングだの意気投合だのしなくても手札が減らなくなった。

そして生まれたゼロックスの究極系とも言えるデッキが、みなさんご存じ【猿】、すなわち【珍獣】である。

1CPアドバンテージユニットを投げ続けて、さらに学びの庭とかいう「0CP2ドロー」を叩き込む。

バクダルマンLv3を虎視眈々と狙うとともに、通常ドローでベリアル(後期はブレドラ)・ブロウアップという除去カードを引き込み、並べた珍獣とともにライフを奪い勝利。

1.1EX_1で若干ブレドラ寄りにテンプレ構築が歪むものの、このデッキは環境トップを走り続けている。"再誕"が終わった、今でさえも。

 

・COJゼロックス理論の終焉

しかしCOJにおけるゼロックス理論はたった1枚のカードで終焉を迎える。

f:id:GN_Denchi:20140530201321p:plain©SEGA

無限の魔法石。1.1EX_2のSRにして、今もトレードレートのトップを突っ走り、全体使用率6位(イベント禁止カード中最高)を誇る例のアレ。

ゼロックス理論の根幹は、「ドローの質を高める」ことにある。

だがもしも?手札1枚を犠牲にすることで、0CPで"今一番欲しいカード"が手に入るのなら?死に物狂いで圧縮して、通常ドローの質を高める必要なんかない。

さらに言えば、今でこそおなじみの「0CP3枚ドロー」、一筋の光明が劇的に使いやすくなったのもこのバージョンだ。

魔将・信玄によって相手の都合を考えずに勝手にライフを3以下にできるようになったからだ。今では、断罪のメフィストというさらにブッ飛んだ何かがその役を務めている。

1.1EX_2を期に、魔導書・鎧・棚などの「0CPドロートリガー」の使用率はガタ落ちした。一方各種サーチャーやヴァイパーなどのアドバンテージユニットは使われ続けた。魔法石のコストを確保するためだ。

カイムに至ってはもはや"神"か何かと言ってもよくなった。盤面に与える影響もきっちり3CPクラスな上、魔法石や光明にアクセスしてしまうためだ。

1.2になって、アンチ進化カードなどのピンポイントメタカードが増加し、魔法石の重要度はさらに大きくなっている。光明ゲーを加速させているメフィストもデッキに3枚入れたいカードではないので、やはり魔法石ゲーなのだ。

 

 

・じゃあ、イベントの話をしよう

 

なぜ僕が2800字も使って昔話をしたのか。理由は簡単だ。

 

今回のイベントには、魔法石も光明もない。

 

VR/SR/PR禁止だ。SRのこの2枚は使えない。この2枚は、環境に存在しない。

欲しいカードを手に入れるために、僕らはデッキを圧縮するしかない。そう、1.1EX_1以前のように。

だからイベント前から言われるように【珍獣】は強デッキのうちの1つなのだ。もちろん、弱肉強食に耐えて、OCユニットに頼りがちなフィニッシャーをハンデスされる恐怖と戦いながらだが。

 

圧縮の話とは関係なくなるが、このイベント、恐ろしいほど全体除去がない。

"カキーン"、"チェスト"、"覚悟せい"、"ブハハハ"。なんもない。

闇に堕ちることもなければ、ドラゴンにゲロも吐かれない。

チェインフレイム・弱肉強食・魅惑のテレスは敵味方識別不可能な上範囲が限定されている。同じ無差別効果でもメフィスト毘沙門ほどの信頼性はない。

ドラゴンボルケーノ・ホーリードラゴンにはタイムラグがあり、ヒトミでも絡まなければムーンセイヴァーで対処可能だ。

再生計画?光明も卑弥呼もないのに使うかってんだ。白き調和?6CP黄伏せにノーケアで殴るほど、エージェントは無知じゃない。

 

僕個人の印象としては、イベント環境の除去手段はブロウアップとムーンセイヴァーの2強だ。

チェインフレイムはこれらの次点。何より【ヒトミデーメーテール】の大流行が痛い。

ジャンプーを出しても決定的に盤面を変えるまではいかない。このルール、黄色の決定力は異常に低い。ジャッジメントもないしね。

そして何より、このイベントの除去手段はインターセプトに偏っている。ヒッキーさんの言葉を思い出そう。"デッキのインターセプトを涸らしてしまえば連続オーバーライドの確率が高まり、デッキの回転率も格段に上がります"・・・このイベントの新品の鎧は、恐ろしく強い。

ついでに言うと、トリガーゾーンを複数枚埋めることのリスクが全国に比べて遥かに小さい。アザゼルがいないためだ。

せっかく引いてきたブロウアップは、トリガーゾーンにすぐに置くのが無難だ。ヘルハウンドやダインスレイフよりも、見習いシーフやタナトスのほうがよっぽど多い。

 

では、イベント最強のユニットは?僕はロキだと思っている。

大満足の肉体に加えて、"最強の除去手段"を持ってきてしまう。

圧縮・戦闘・除去。COJの、TCGの全てと言ってもいい。

今の全国におけるカイムレベルの、超意味不明クリーチャーだ。だから僕はこのイベントは青絡みしか使わない。

 

僕はこのイベントが異様に好きだ。何か、ものすごく古いバージョンのCOJをやっているような気がして仕方ないのだ。

それでいて、細かいアドバンテージの積み重ねが勝負を決めたりするし、膠着状態を打ち破る妙手が光るのもこのフォーマットならでは。

ついでに言うとジョーカーがちゃんと"切り札"だ。ジョーカーなら全体除去もジャッジメントも許されている。このイベントでのスターバーストの破壊力と不快さは異常だ。

COJとは別のゲームみたいだけど、面白いと思う。筐体に座れる時間があまりないから、必要以上は走らないだろうけど。

 

 

"魔法石以前"を思い出せ。

COJは、圧縮するゲームだ。