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COJ山梨支部

移転準備中。

《女神の息吹》、その功罪

 現COJで最強のカードと言うと意見の分かれるところだろう。

 《魔天ルシファー》かもしれないし、《邪眼天使サリエル》を推す人もいるだろう。その昔は《蠅魔王ベルゼブブ》や《破壊少女シヴァ》であったかもしれない。

 

 では、現COJで「最凶」、あるいは「最悪」のカードは?《破滅のギャンブラー》?

 

 僕は《女神の息吹》だと思う。

 

 これはVer2.0_EX2最序盤の環境アナライズであり、DOBシステムの真意と深淵に近づくものであり、ランキング復帰を諦めた僕の愚痴である。

 結構な長文、しかも難解な内容になるかもしれないが、比較的ヒマだというのならお付き合い願いたい。

 

 

・そもそも「DOBが高くなる」とはどういうことなのか

 

 DOB、デッキオリジナリティボーナスが高くなるデッキというのは大きく2つに分けられる。

 1つ目は、デッキコンセプトそのものがオリジナリティに溢れている場合。完全なる新デッキが生まれた場合、基本的にこちらになる。【OC特化珍獣】も、Ver1.4後期の【舞姫】や【赤青魔手ハンデス】も、最初はこちらだった。Ver2.0_EX1前半、きょへ式【黄紫】なんかもこちらの部類。一部の職人が不思議なワンショットデッキを組んだ場合なんかも相当する。

 現環境では唯一【ティアマトギャンブラー】がこれに当たる。成立からそれなりの日数が経ってはいるが、未だに各パーツのポイントが上がらない(理由は後述)のでたまにフルパワーでSになったりする。各パーツ毎のポイントが割と均一で、俗に言う"綺麗なポイントの付き方"が特徴。僕がイマイチ【ティアマトギャンブラー】を憎み切れないのは、この綺麗なポイントの付き方にあると言ってもいい。

 

 2つ目は、「デッキの機能を維持したまま異物を混入させること」。今回の本題はこちらである。【猿】、Ver1.2_EX【赤黄ミッドレンジ】、Ver1.3【海洋】、Ver1.3_EX1【侍】、Ver1.4_EX1【加護盗賊】、Ver1.4_EX2【舞姫アリアン】、Ver1.4_EX3【赤青魔手ハンデス】・・・環境を支配してきた1強デッキ達にも、フルパワーの状態とは別にシーズンごとにDOBを調整したバリエーションがあった。

 

 ただこの場合に重要なのは、"デッキとしての機能を維持"することである。DOBの数値調整のために必須カードを抜いてしまっては元も子もない。緩和された要求勝率以上に負けるのがオチである。(こちらも参照→チラシの裏 これでB!?

 

 デッキ毎の必須パーツというのはデッキ毎に違う。この必須パーツの枚数が40枚中何枚かというのが問題である。上に挙げた例では【赤黄ミッドレンジ】【侍】【舞姫アリアン】なんかは35枚近くが抜いてはならない必須パーツであり、DOB調整の難しいデッキであった。逆に【海洋】【加護盗賊】あたりはこの中では比較的自由度が高く、シーズンが変わる毎にDOBの高い構築バリエーションを考えるのが常であった。

 また、デッキコンセプトに"圧縮"が含まれる場合、見かけ以上に必須パーツが多くDOBを上げるのが難しい。上記のデッキ群では【猿】がこれに相当。《女神の詩》など圧縮手段をマイナーなものに切り替えることでDOBを上げたり、進化土台に《ケロール・レッド》など明らかに弱い1CPカードを使うなど非常に苦労してきた歴史がある。Ver2.0以降の【紫単】は同様の問題を抱えるが、紫ゲージの概念が追加されているせいで圧縮手段や進化土台にも自由度がほぼなく、"DOBの高いバリエーションを作ることが最も難しいデッキ"と見てしまって間違いない。

 

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↑Ver2.0_EX1前半、全盛期【紫単】の必須カード。35枚取られてわずか6pt。

 

 では、流行りの【緑単S】の必須カードを見てみましょう。

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 15枚。ジョーカーもほとんど自由なので、今0ptと書いてあるからと言ってこれを160ptにするのが容易だということがわかるだろうか。

 

 

・"異物"を最大限に有効利用できる、最近の高オリボデッキ

 

 最近の高オリボデッキに共通するのは、「DOBを上げるために入れた"異物"の有効利用に長ける」、ということである。

 

 基本的には、引いてしまった弱いカードの使い道は普通に出すか、軽減コストに使うか、あるいは《無限の魔法石》で捨てることだった。「《策略の装填》S環境」や「《はにわ》《白虎》《朱雀》S環境」など、過去のS環境を体験してきたプレイヤーはこの異物処理に悩まされてきたことだろう。DOBを上げるために《無限の魔法石》へのアクセスも悪く、そもそも《無限の魔法石》の枚数自体を絞らざるを得ないケースすらあったはずだ。

 

 が、カードプールの増加にともなって、《無限の魔法石》のように「手札あるいはトリガーゾーンをコストとして、なんでもかんでも1:1交換してしまうカード」が増えた。具体的にその契機となったのは《聖少女ブリギッド》と《邪眼天使サリエル》である。《マーメイド》もその1つだが、自己再生できる青ユニットが登場するまでは採用するメリットに乏しく注目されなかった。

 

 《邪眼天使サリエル》がトリガーゾーンの何を破壊しようが、対戦相手のユニット2体は破壊される。この場合において、0ptカードも8ptカードも等しくサリエルの弾でしかない。Ver2.0以降の【海洋】はこの"異物処理"に極めて長けるデッキであり、サリエルだけでなく《マーメイド》で引き直したり《デスパレート》であらかじめ埋めたりと、これまでの"異物処理"の基本であった「とりあえず場に出す」「軽減コストに使う」以外の方法をフル活用し、更にそれら全てが最終的に《天然魔導士ミーナ》《レヴィアタン》らの自己再生に繋がるのである。

 

 【緑単S】は、不要牌を《聖少女ブリギッド》によって3コストユニット(すなわち《飛翔のジズ》《プラウドドラゴン》)に替えることもできるが、基本的には「軽減コストに使う」ことを極限まで突き詰めたデッキであると言える。本来5CP(《ドーバーデーモン》でも4CP)かかる連撃ギミックを、最序盤の3CPしかない場面から全ツッパで押し通し始める。

 

 悪く言うと【海洋】は《邪眼天使サリエル》頼みだし、【緑単】は《聖少女ブリギッド》頼みなのだ。DOBを上げるということは、基本的にはデッキ内のパワーカードを減らすことである。圧縮に特化しているわけでもないのでデッキが1周することはなく(【海洋】は1周できなくもないが、自己再生の関係上2周目突入直後が弱い)、必殺技であるはずのサリエルやブリギッドは基本的には3回だけなのだ。最長10ターンあるCOJにおいて、Sデッキが強みを見せるのは3ターンだけ。カードパワーの高いカードを複数揃える低オリボデッキに、基本的には勝率で劣る・・・

 

 そのはずだった。

 

 

・《女神の息吹》、その功罪

 

 「Sデッキは強い行動を取れる回数が少ない」、というこれまでの原則をたった1枚でひっくり返しているのが《女神の息吹》である。

 

 まずこの《女神の息吹》というカード、高DOBデッキにおける"異物"利用の基本概念である「軽減コスト」というルールと極めて相性がいい。なんでもかんでも軽減に挿してしまうことで発動条件である「手札0枚」を満たすと同時に、次のターン回収した2枚にとっては軽減コストとして利用できることになる。【緑単S】でよく見る光景だろう。「手札の不要牌を全て切って捨札中最強の2枚に交換する」行為と言える。

 

 《邪眼天使サリエル》についてはCIPの選択回収で《女神の息吹》を回収できるという相互効果がある。基本的には《邪眼天使サリエル》がターンを跨いで生存しようものならその試合はだいたい負けなので除去しなければならないのだが、死んだはずのサリエルを《女神の息吹》が回収してしまう。以降、相互に回収を繰り返すことでループが成立する。

 

 《女神の息吹》が出張ってくる試合が面白くないのは、「延々と同じことを繰り返される」ことにある。サリエル息吹ループはまさにそれだし、【緑単S】も多いときは5回以上ブリギッドやジズを出してくる。そもそも《女神の息吹》が《女神の息吹》を回収できるせいで《女神の息吹》を全てのターンで使われるという展開も珍しくない。序盤、中盤、終盤という概念がどこかに消え去り、回り始めるとそれ以降は機械的に同じことを繰り返される。すなわち、「DOBの高いデッキでも最強行動を繰り返せる」。緑単系にしろ青単系にしろ、Sデッキがなかなか死滅しないのはこれによって要求勝率をクリアしているから。

 

 《無限の魔法石》によってデッキから確定サーチするのには、回数に限度がある。1度使用したカードをデッキに戻すためにはデッキを1周させなければならないからだ。一方、デッキ以外を対象とした確定サーチにはその回数に限度がない。特に捨て札は使用したカードがすぐに置かれる場所なので、最も再利用が容易である。その分、捨て札からの確定回収は比較的厳しい条件が課されている。

 

 捨て札から確定回収するための手段を運用するためのコストを見てみよう。

 

・《女神の息吹》:0CP ※2枚回収

・《神託の天草》:2CP+進化土台 ※被破壊時

・《冥札再臨》:2CP+ジョーカーゲージ50%

・《邪眼天使サリエル》:5CP+進化土台

 

 似たような概念である、消滅領域からの確定回収についても列記。

 

・《神札再生》:0CP ※自ターン開始時まで黄色ユニットとトリガーゾーンを保持

・《ダークプリースト》:3CP

・《光明神アポロン》:4CP ※被破壊時

 

 《女神の息吹》以外のカードが厳しい条件を課されているのがわかるだろうか。《邪眼天使サリエル》や《光明神アポロン》は回収以外にも多機能なユニットであるが、それでもこういったユニットを呼ぶために1ターンで使えるCPのうち半分以上を割くことになる。

 消滅領域回収によって比較的自由に強行動を繰り返す【黄単S】系統だが、それでもヘイトが向きにくいのはいつかどこかで《ダークプリースト》にCPを割いているから。《ダークプリースト》を出したターンというのは本当の意味での"最強行動"ではない。例えば《ダークプリースト》の代わりにその3CPで《雷神トール》でも出されようものならその6000はスピードムーブで走ってくる。そもそも消滅領域にカードを送り込むためには《どきどきテイスティング》などでワンクッション必要、というのも忘れてはならない。

 

 確定回収にCPを使わないことで、「最強行動をしながら次のターンの最強行動の準備をする」というめちゃくちゃな事態が多発している。《邪眼天使サリエル》はその攻撃時効果によってそもそも青系の最強行動であることも多いが、《繁栄の対価》《デストラクションスピア》などそれなりに潰す手段が用意されている。

 《神札再生》も実はやべーのでは?と思うかもしれないが、発動タイミングが限られている有色インターセプトであるために対策がそれほど難しくない。盤面から黄色ユニットを全て排除すれば当然使えないし、そもそもトリガー割りで割れる。《女神の息吹》は度重なる強化によって発動タイミングが"自分、あるいは相手のターン終了時"となっており、赤・紫系のトリガーを割れるデッキ相手には割られる前に発動し、青系あるいは《明天凶殺》といったハンデスデッキ相手では相手ターンをやり過ごしてから発動できる。《女神の息吹》そのものを止めるためには、ハンデス要素に加えてバウンスかトリガー割りどちらかが必要なのだ。捨て札を消滅させる《盗賊の手》《文明崩壊》では、間に合っていないケースが非常に多い。

 

 さらに問題なのが、「少数の必須パーツと多数の高オリボカード」という構成はカードランキング更新による打撃を受けにくいことである。上に画像で示した【緑単S】の必須パーツはずっと0ptをキープしているが、残りの25枚とジョーカーの部分において手を変え品を変えS構築を維持し続けている。《イナバハンター》がダメになっても別の何かを使えばいい。ひとつのデッキがこんなに長くS構築を維持し、さらにはランク毎の要求勝率を満たしてくるというケースは前例がない。【ティアマトギャンブラー】がデッキ単位で未だに高いDOBを叩き出すことがあるのはこれが原因。「勝てるSデッキが【ティアマトギャンブラー】しかない」のなら、すぐに次のシーズンでDOBがガクッと落ちる。あのデッキ自体は《ディバインシールド》まで含めて必須パーツがそれなりに多いコンボデッキなのだ。それでももっとお手軽な【緑単S】が常時存在するためにデッキ種として選択するプレイヤーが少なく、本格的な流行にまで至っていない。

 

 

 今までの文章全てを踏まえて、今の全国対戦で何が起こっているのかというと

 

・カードプールの増加により、「必須パーツ少数と、それ以外の部分に高オリボカードを詰め込んだSデッキ」が成立

・そういったデッキが《女神の息吹》によって最強行動を繰り返せるようになったので、必要勝率を満たしている

・《女神の息吹》そのものを止めることは難しく、必然的にそのデッキの最強行動をメタるしかない

「必須パーツ少数と、それ以外の部分に高オリボカードを詰め込んだSデッキ」はカードランキング更新の影響を受けにくく、いつまでも高DOBデッキとして全国対戦環境に残存する

 

 

 Ver2.0_EX2へのバージョンアップから1週間も経たないうちに、勲章レースを制するには高オリボデッキしかないという結論が出てしまった。新しいSデッキを開発する場合を除いて、「新デッキ開発」あるいは「全国大会に向けた最強デッキ探索」を行うことは「ランキング入りを諦める」ことと同義になってしまった。"勝率を重視した新リーグ"という上位陣の幻想は、エメラルドランク実装から1週間持たずに、早くも崩れ去ったのである。

 

 もちろん、【ブリギッドハンデス】ミラーなど、《女神の息吹》によって面白くなるゲーム展開がないわけではない。そもそも《謀略の祝杯》と並んでハンデスメタとしての役割もあるのだ。 だがそれでも、現在の息吹を取り巻くデッキ構築並びにその結果のランキング争いは、あまり誉められたものではないと思う。

 

 

・「COJはこういうゲームなんだ」、と割り切るかどうか

 

 こういう部分まで含めてCOJというゲームなんだ、と言われたら仕方がない。僕は開発ではないので、それを受け入れるしかない。

 ただ"強いプレイヤーが全国ランキング上位にいる"という状態に戻すためには、「《女神の息吹》を下方修正する」か「DOBというシステムそのものを抹消する」しかないと思う。「ランキング指標となる勲章を集めるために一定勝率を維持し続けることを要求する」勲章システムはそこまで悪いものではない。

 

 エメラルドランクが実装された暁にはランカー復帰目指してみるか、と当初は考えていたが、僕の時間リソースの総量はそれに耐えられるものではなかった。全国大会の準備を細々としながら、適当なペースでCOJと向き合うことにする。

 

 僕はもう心が折れてしまったのだ。僕が今のエメラルド環境ならびにランキング争いを見てこうなんじゃねえかと勝手に考えているだけなので間違っている部分はあるのかもしれないが、もしそうなら間違っていると教えてほしい。